このコラムにたどり着いた方は、お子さんの字について悩んでいるのではないでしょうか。もしかすると「書字障害かも」「協調性発達運動障害かも」と思っていることもあるかもしれません。
実は、ギフテッドやその傾向のある子のなかには、「字を書くのが嫌い」という子がかなり多くいるようです。
塾の先生など、世の中には「頭がいい子ほど字が汚い」という実感を持っている方もいらっしゃいます。
もちろん、「字が汚いなら頭がいい」は言いすぎですし、「ギフテッドだから字が汚い」も言いすぎです。しかし、ギフテッドに関する書籍を読んでいて、よく「書字」に関する話題が取り上げられているのも事実。
字が汚いからと言って、そのまますぐには、書字障害ということにはなりません。同年齢集団よりも明らかに書字が苦手でないと書字障害とは診断されないからです。
このコラムでは、「頭がいいのに字が汚い」原因を探りつつ、簡単な解決策をご紹介しています。
※書字障害やDCDを疑っている場合は、受診もしてくださいね。
頭がいいのに字が汚い理由
頭がいいのに字が汚い場合、考えられる理由は以下のようなものです。
- 頭の回転に手が追い付かない
- きれいに書くことに、意味を見出せない
- 手先が不器用
- 協調性発達運動障害がある
- 学習障害(書字障害)がある
- 論理力や推理力は高いが、空間認知はさほど高くない
- 論理力や推理力は高いが、処理速度がさほど高くない
(※一部理由が重複しますし、相関関係があるものもあります)
このコラムでは、「手先が不器用」「処理速度が低い」「頭の回転に手が追い付かない」が原因の場合におすすめの文房具をご紹介しています。以下のようなお悩みを持つ方は、手先が不器用な可能性があります。
- 書けないわけじゃないけど、苦手意識が強い
- 文字が枠からはみ出る
- 頑張ればきれいな字が書けるけど、頑張らせるのが大変過ぎる
- 字を書かせると、子供がイライラする
- はさみを使うのも苦手
- 折り紙が苦手
なお、書字障害(LD/ディスグラフィア)や発達性協調運動障害(DCD)を疑っている場合は、専門家に相談するようにしてください。
文房具を見直そう!
もっとも簡単で、親子ともにストレスのかからない方法は「文房具を見直す」ことです。
書字支援というと、作業療法が代表的ですね。もちろん効果はあるでしょうが、継続的に続けていくのは、親子ともに負担がかかります。そんなときに強力な味方になってくれるのが「文房具」です。親も子も負担がほぼゼロで、金額的な投資も少ないのがメリット。
ここで紹介するのは、以下の3つです。
- 下敷き
- 定規
- 鉛筆
たかが文房具とあなどるなかれ。楽に書けるって、本当に大切なんです。
「書いている」が脳に伝わる下敷き
魔法のザラザラ下じきは、作業療法士が監修した下敷きです。下じき表面に小さなつぶつぶがあり、文字を書くときにそれが振動となって、脳に伝わります。「書いている」感覚が強くなることで、イメージした文字と手の動きが一致しやすくなり、運筆力がアップ。
この下敷きを使い始めて2週間くらいで、手放せない存在になりました
注意点としては、字が少しぼこぼこしてしまうこと。
この下敷きは、実はツブツブの大きさが2種類あります。大きいつぶつぶ(0.6mm)と、小さいつぶつぶ(0.3mm)です。我が家は未就学児がいるので両方買いましたが、両方試してみて、字のデコボコが目立たない0.3mmがおすすめです。特に完璧主義がある子は、0.3ミリが安心です。幼稚園児の子でも0.3mmで大丈夫ですよ。
家にある下敷き2枚を並べて撮ってみました。
- 奥側にあるのが0.6ミリの透明下敷き
- 手前にあるのが0.3ミリのブルーの下敷き
透明のほうが見づらくてごめんなさい。よく見ると、つぶつぶが見えると思います。青いほうは、写真ではよく見ないとわからないくらい粒が小さいです。
続いて、書いた文字を比較してみます。上から順番に0.6ミリ、0.3ミリ、普通のつるつる下敷きです。
写真では見えづらいですが、「お」を比べると、0.6ミリはわずかに文字がガタついているのがわかると思います。
0.3ミリは肉眼で比べると、少しぶつぶつしているのがわかりますが、慣れてくれば気にならない程度です。
せっかくなので、Amazonの口コミもご紹介します。
子どもの学校用に購入。裏と表で違う素材を貼り合わせたものなので、仕方ないのかもしれないが、数回使用しただけで角からペロンと剥がれてきた。一週間も使えず驚き。耐久性が改善されると良い。
先天的に書字を苦手としており、専門家からもサポートが必要、と言われているレベルの子供の漢字の書き取りに使用しました。
使用しない時と比べて、線を濃く真っ直ぐに、折れの部分をしっかりと書くことができたため、全体的にいつもより読みやすい字となりました。
本人も書き心地が良いと感じたそうです。
恒久的な効果であるかはわかりませんが、使用者の自己肯定感に繋がるのであれば充分価値のある商品だと思います。
マスから飛び出す文字を書く子の為に、柔らかい下敷きを使っても飛び出していました。
このザラザラ下敷きに変えて、「これはお前の力を抑えるための道具だ、使うが良い」と子供に与えたら字が飛び出す事もなくマスにおさまるようになりました。
もっと早く買えば良かったです、もう一枚買おうと思います。
口コミによると耐久性がいまいちのようですね。我が家では半年くらいで、角がはがれたり、かけたりしました。子供が扱うものなので、多少傷んでしまうのは覚悟しておいたほうがよさそうです。
正直、耐久性なんか気にならないくらい、我が子には合っていました。もっと早く買ってあげたかったです。ちなみに、近所の文房具屋さんでは売ってなかったので、Amazonで買いました。
下敷きにしては高価格ですが、価値はあったと思います。
ユニバーサルデザインの定規
続いてご紹介するのは、ユニバーサルデザインの定規です。定規を扱うのは、意外にたくさんの動作が含まれています。
- 定規を動かす
- メモリを読み取る
- 片手で定規をおさえて、もう片方の手で書く
両手を使うので、途中で定規がずれてしまったり……。不器用な子には意外に難しいようです。
下の写真をご覧ください。ひとつは、メタリックブルーのデザインがかっこよくて購入した定規。もうひとつは、千葉県にある視覚発達支援センターで購入したもの。
えっ? こんなに見え方が違うの?
1mmの大きさが違う気がして思わず確認しましたが、ちゃんと1mmでした。
下の黄色い定規のほうが、圧倒的に数字が見やすく、メモリが読み取りやすいです。また、黒い部分はゴムになっていて、定規がすべりにくいように工夫されています。
薄い黄色なのは、視覚の過敏さがある子への配慮ですね。しかも透明なので、下がよく見えて、平行な線も引きやすそう。
気に入った文房具でモチベーションをあげるのも大切ですが、もしその定規が扱いづらそうだったら、ぜひ購入してあげてください。小学校では、2年生で長さを測ったり、図形を描いたりしますよ。
こちらの定規、残念ながらオンラインでは見つかりませんでした。役に立たなくてごめんなさい。ですが、少しでも見やすく、扱いやすいものを選ぶ視点が大切です。Amazonで見る限り、こちらのものが近いかなと思います。15センチは、小学生の筆箱にぴったりのサイズですよ。
2023年4月6日追記
Amazonで見つけました!【井上製作所】のフォロー定規15cmです。少し高いですが、なかなか市販では見かけないので、ガマンどころかな……。
デザイン工学の視点で開発された鉛筆
スタビロの鉛筆は、デザイン工学分野で著名なドイツのダルムシュタット工科大学の人間工学チームと共同開発されたものです。
太さや形は、公文の三角鉛筆に近いですが、その違いはくぼみがあること。自然にそこに指を置くことができ、持ち方の矯正につながります。
左利き用もあるのがうれしいですね。
せっかくなので、レビューもご紹介します。
7歳が正しく持てないので買いました。
三角鉛筆でも常に声かけが必要でした、コレもたまに声かけはいるものの改善。物凄〜く高い商品ですが声かけはお互いしんどかったので良かったです。見ていると一箱使い切る頃には特殊加工なしに(三角か六角かはまだわかりません)移行できそうです。
鉛筆の溝に指がフィットし、他の方のレビューにもある通り、一発で矯正できます!
最初からこの鉛筆を使っていれば、正しい持ち方を身につけられたのに…
なので、これから初めて鉛筆を持つお子さんにオススメです。
注意点は、太めなので専用の鉛筆削りが必要なこと。もし公文の鉛筆削りをお持ちなら、代用できます。
幼児から小学校低学年くらいまでの、鉛筆が上手に持てない子におすすめです。
グリッパー鉛筆
鉛筆の持ち方には問題がないお子さんや、ペンケースに入れる鉛筆を探している場合、こちらの鉛筆がおすすめです。
滑り止め加工がついており、指先が滑りにくいよう工夫されています。こちらは、近くの文房具屋さんで手に入りました。(価格はあまり変わらなかったと記憶しています。)
実際に使用してみると、普通の鉛筆よりも少し滑りにくいかなという印象です。「すごく変わった!」というほどではありませんが、この鉛筆を使用していることが多いので、使いやすいのだと思います。
頭がいいのに字が汚い子は、手先の不器用さを疑ってみて
実は、わたしも子供の書字障害を疑って、相談したことがあります。しかし、看てもらっても問題ないと言われました。このような場合、プロの手を借りることも難しく、親がなんとか対応をしていくことが多いと思います。
文房具を変えて、子供の自己肯定感が上がりました。まさかと思うかもしれませんが、字がうまく書けると、自信になるし、書くことへのストレスが減るから、親も怒らずにすみます。
しかも、電車に揺られて作業療法に行くとか、親子でバトルになりながら字のトレーニングをするとか、学校の先生と宿題の量を減らす交渉をするとか、そういう辛いことを一切しなくていい。
買うだけ。
騙されたと思って、ぜひ試してください。
ちなみに、紹介した3つの中で一番おすすめなのは下敷きです。
完璧主義のその子には、0.3ミリです。
今回は、書字の苦手さの原因が「不器用さ」にある子におすすめの文房具をご紹介しました。しかし、書字の苦手さが「図形感覚の弱さ」に起因していることもあります。(もちろん、両方が原因のこともあります。)
以下のような特徴がある場合は、図形認知や視覚認知を鍛えることで、書字が改善するかもしれません。
- 字が枠からはみ出る
- 字のバランスが悪い
- 図形問題が苦手
- 漢字を覚えることが苦手
- 漢字のパーツを間違う
- 板書が遅い
- 球技が苦手
- WISCで言語理解と知覚推理のスコアを比べたときに、知覚推理が有意に低い
そのような場合には、ぜひ以下の記事も読んでみてくださいね。
漢字の書き取りが苦手なお子さんは、こちらもどうぞ(一部内容が重複します)。
「書字の他にはどんな支援をすればいい?」と迷っている保護者の方へ。ギフテッドの子育て指針は、下記のコラムでご紹介しています。