「ギフテッドはIQ130以上」とよく言われています。では、IQが130より低い場合には、ギフテッドではないのでしょうか?
IQ122だから、ギフテッドとは言えないよね?
結論から言うと、IQ120であっても、「ギフテッド」に相当する方はいらっしゃいます。
お子さんについて、以下のような悩みを持っている方は、ぜひ最後までお読みください。
- 発達凸凹があり、IQが高めである
- IQ130ないけれど、特徴がギフテッドと似ている
- 頭はいいが、登校渋りがある。不登校である
- ギフテッドかもしれないが、確信が持てない
※当ブログのIQは、すべてWISCやWAISなどウェクスラー式(SD15)のスコアを想定しています。
IQテストについて
本題に入る前に、IQとIQテストについて簡単に説明します。すでにWISCについて知っているという方は、読み飛ばしていただいてかまいません。
IQの計測方法
正確なIQはインターネットにあふれている遊びのテストではなく、心理士によって測られる必要があります。現在日本において使用されているIQテストには、以下のようなものがあります。
- WPPSI(2歳6カ月~7歳3カ月)
- WISC(5歳0カ月~16歳11カ月)
- WAIS(成人用16歳0カ月~)
- 田中ビネー知能検査
本ブログは主に子育て中の保護者に向けて書いているので、児童向けのWISCについて簡単に説明します。
WISC(ウェクスラー式知能検査)は5歳0カ月~16歳11カ月の子供が対象の知能テストで、下記の項目それぞれでスコアがでます。
- 全検査IQ(FSIQ)
- 言語理解(VIQ)
- 知覚推理(PRI)
- ワーキングメモリ(WMI)
- 処理速度(CPI)
一般的にIQと言う場合、全検査IQのことを指していることが多いです。
100±15の枠に、全体の3分の2の人があてはまり、130以上は全体の2%に当たります。なお、最高で160までしか測定できません。
また、スコアは月齢に応じて算出されます。
同月齢集団の平均が100になるように設定されているので、「5歳で130のほうが7歳で130よりすごい」ということにはなりません。
ここで注意したいのは、各項目の差が大きい場合、FSIQは指標にならないということです。同じIQ120であっても、バランス型と凸凹型では、まったくの別物です。
ではIQいくつからギフテッドなのか
米Davidson Instituteによると、ギフテッドのレベルは下記のようにあらわされます。
IQ115-130 マイルドリー・ギフテッド
IQ130-145 モデレートリー・ギフテッド
IQ145-160 ハイリー・ギフテッド
IQ160以上 プロファウンドリー・ギフテッド
IQ160-179をエクセプショナリー・ギフテッド、180以上をプロファウンドリー・ギフテッドとすることもあります。160以上は一般的な知能検査では測れませんので、年齢による到達地点や、追加の検査で測るようです。
IQ115以上あればみなギフテッドというわけではありませんが、おおむねIQ115あたりからギフテッドである可能性を視野に入れるべきだと言えます。
ちなみに、IQ130とIQ160では30の差がありますが、これは平均であるIQ100とIQ70(軽度知的障害)の差と同じですね。ギフテッドは、このくらい「粗い」定義です。
IQが高くなるにしたがって、人数も減っていきます。ハイリー・ギフテッドやプロファウンドリー・ギフテッドは、ギフテッドの中でも珍しいと言われています。ギフテッドに対する支援も、ほとんどがマイルドリーやモデレートリーを対象としています。
「IQ130以上あってもギフテッドでない」場合はあるか
『我が子がギフティッドかもしれないと思ったら』の訳者であり、ギフテッドの研究者である角谷詩織さんは、論文で下記のように述べています。
「FSIQが130以上であれば,ギフティッドである」ということは確かだと考えてよいということを押さえておく必要があるかと思います
知能検査とギフティッドの判定
一方で、幼少期のWISCのスコアが高くても、高校生あたりで失速する「早熟なタイプ」が存在するとも言われます。
研究者によって見解がわかれているようです
ただし、「IQ130以上あるがギフテッドではない可能性」について、大きく問題視されることはないようです。
おそらくですが、IQ130を出す場合、仮に単なる早熟だったとしても、ギフテッドプログラムにそれなりに適応してやっていけるのでしょう。どちらかというと、「IQ130ないからギフテッドではない」と切り捨てられるケースのほうが、問題視されます。
日本におけるギフテッドの事例とIQ
ここまでで、ギフテッドとIQについて以下のことがわかりました。
- IQ130以上はギフテッドという見解が一般的
- IQ115以上からギフテッドの可能性あり
最後に、日本における研究や、臨床で取り上げられている事例をご紹介します。
年齢性別 | FSIQ | 言語理解 | 知覚推理 | ワーキングメモリ | 処理速度 | 引用元 |
---|---|---|---|---|---|---|
9歳男児 | 117 | 117 | 136 | 91 | 96 | 発達障害と不登校―社会からの支援 がない子どもたち |
12歳男児 | 127 | 128 | 129 | 118 | 118 | 発達障害と不登校―社会からの支援 がない子どもたち |
8歳女児2E | 118 | 155 | 106 | 94 | 91 | 発達障害と不登校―社会からの支援 がない子どもたち |
11歳9カ月男児2E | 131 | 129 | 129 | 115 | 115 | 発達障害と不登校―社会からの支援 がない子どもたち |
知的ギフテッド6ケース平均 | 124.7 | 130.0 | 129.7 | 101.5 | 101.7 | 認知機能にアンバランスを抱えるこどもの「生きづらさ」と教育 : WISC-Ⅳで高い一般知的能力指標を示す知的ギフティッド群 |
小1男児 | 123 | 131 | 122 | 112 | 96 | 「未来の教室」と EdTech 研究会(第9回) |
いかがでしょうか? 日本においても、FSIQ約115から、ギフテッドとされる事例がありますね。米Davidson Instituteの紹介するギフテッドレベルの表を裏付ける結果となりました。
また、言語理解か知覚推理の両方またはどちらかが高く、処理速度が低いという傾向が見てとれます。「言語理解」と「知覚推理」は純粋な知能を示すものと言われています。
前者2つのスコアから導き出されるスコアを「GAI」と言い、ギフテッドは高いスコアを示すと言われています。FSIQではなく、GAIをギフテッド判定に用いることもあります。
今回探し出すことができたスコアは、臨床のものが多かったです。2Eタイプのギフテッドも多いかもしれません。
なお、本人が検査に興味が持てないなどの理由で、スコアが低く出ることもあります。一方、実際の知能よりも高くでることは少ないと言われています。そのため研究者は、IQ130ないというだけの理由で「ギフテッドではない」と切り捨てることがないよう、たびたび警鐘を鳴らしています。
ちなみに、ここまではWISC-IVでのスコアです。WISC-Vについては以下のコラムもご参考ください。
まとめ
- IQ130以上はギフテッドだという見解が一般的
- FSIQ115以上からギフテッドの可能性がある
- その場合には、言語理解と知覚推理のどちらかまたは両方のスコアが高い
- ディスクレパンシーが大きくても発達障害とは限らない
IQが130より低くても、おおむねIQ115からギフテッドの可能性があることがわかりました。ギフテッドとされる子供たちのIQを見て、どう感じましたか? 「やっぱり我が子はギフテッドかもしれない」と思う場合、専門家に相談してみてもよいかもしれません。
ギフテッドと障害を併せ持つ「2E」については、こちらで解説しています。
ギフテッドな子の子育てで迷ったら、こちらもどうぞ。