「ギフテッド不登校の原因は浮きこぼれ」
ギフテッドについて調べているとよく目にする・耳にする言葉です。
けれども、こう思う人もいるのではないでしょうか?
うちの子は、ギフテッドっぽいところもあるけど、浮きこぼれっていう感じはしないなあ。やっぱりギフテッドではないのかも。
また、先生や友人など、当事者ではない周りの方々は、こう思うかもしれません。
学校の授業が簡単すぎる子って、それなりの数いますよね?
「小さいころから公文に通っていて、学習がすごく進んでいる」とか。
「中学受験を目指して塾に行ってるから、学校のテストはいつも満点」とか。
習熟度の高い子どもは、一定数いる。それなのに、どうしてギフテッドの子ばかり、不登校が問題になるのでしょうか?
※ギフテッドみんなが不登校になるわけではなく、問題なく学校生活を送れる子も多くいます
理由1: 納得できないことにストレスを感じる
子供たちの中には、大人の言うことを素直に聞ける子もいます。しかし、ギフテッドのお子さんの中の場合、そうではない子も多いです。
たくさんのことに疑問を持ち、ルールには理由を必要とします。
教科書は明日も使うし、家では読まないから、置いていってもいいですよね
学校のルールで持って帰ることになっているよ。みんな持って帰るよ
なんでそんなルールがあるんだろう……
体操服忘れても体育できるのに、どうして見学なの?
例外を作ってしまうと、みんなが「ずるい」と感じるよ
……
ギフテッドたちは、納得しないまま行動することが、苦手な場合があります。
ですが、学校という場は、先生の力や同調圧力が強い場所です。子供たちは、疑問を抑え込み、先生の言うとおりにふるまうこともあります。また、賢いとはいえ、自分が感じた「もやもや」をうまく言語化できるとは限りません。
なんとなく言いくるめられてしまったけれど、納得できないまま行動することに、大きなストレスを感じているかもしれません。
彼らの疑問は、これだけではありません。
- わかっている問題を、繰り返しやらなくてはいけないのはなぜか
- 人の嫌がることをやってはいないと言うけど、先生は子どもたちに無理やりやらせている
- なぜ自分の名前を漢字で書いたらいけないのか
- 下敷きがなくても困らないのに、毎日持っていかなければいけないの?
- 女子だけに更衣室が与えられるのはおかしい
- 「移動の仕方」を何度も指導され、やりなおしをさせられるのが苦痛
こういった子たちは、一見、問題なく学校生活を送っているように見えますが、だんだん学校が息苦しく感じるもしれません。
友達とのトラブルに発展することも
小学校低学年では、「毎日の持ち物はこれです」など、理由を言わずに、ルールだけ与えられることも多いです。それは、多くの低学年児童にとって、理由は不要だからです。しかし、ギフテッドの特性を持つ子どもには、理由を丁寧に説明をしてあげることが大切です。
理由を与えると、ギフテッドの子は自走することができます。しかし、他の子は、ルールをそのまま飲み込むため、理解度が異なります。これが、トラブルの元になることがあります。
例えば、先生が「鉛筆を毎日削ってほしいから、筆箱は毎日持ち帰りましょう」と言ったとします。多くの子は、これを「毎日、筆箱を持ち帰るルール」ととらえます。しかし、ギフテッドのお子さんは、「今日は鉛筆を使っていないから、持ち帰らなくていい」と判断します。
そして、クラスメイトから一斉に「毎日ふでばこを持ち帰らなくちゃいけないんだよ」と指摘されてしまうことがあります。
こういったささいなことも、「みんなに否定される」「理解してもらえない」「よくわからないルールでがんじがらめにされている」という感覚につながります。
理由2:集団主義と合わない
ギフテッドの子全員ではないと思いますが、集団主義と相性が悪い子もいるかもしれません。
これは、「人の気持ちを考えられない」「協調性がない」というのとは少し違います。
個人主義と集団主義のバランスが、学校よりも「個人主義」寄りだということです。
グループ活動を行っていたときのこと。6人組のうち、A君とB君がもめてしまい、グループ全体の行動が遅れてしまいました。結果として、このグループは、クラス全体に迷惑をかけてしまいました。そのため、先生はグループ全員に対し「クラスのみんなに謝ろう」と指導しました。
しかしC君は、A君とB君のトラブルでいちばん迷惑をかけられたのは、同じグループにいた自分だと感じています。被害者であるはずの自分が、まるで加害者のような扱いを受けることに納得がいきません。
移動教室では「クラスみんなで静かに移動する」というルールがある学校。移動中に私語が多いと、できるまで何回でもやり直します。D君は、一度も私語をしていないし、むしろ話している子には注意をする立場。それにも関わらず、何度もやり直しさせられることが苦痛です。「自分はこれだけがんばっているのに、自分まで一緒に怒られる」と言っています。
「自分の努力では、いかんともしがたい部分で怒られる」のは、誰にとっても嫌なこと。しかし、そのようなことに対して、一定の耐性を持っていたり、受け流すことができる子も多いです。
学校では、このようなことはよく起こりますから、ここでひっかかってしまうと、学校生活はかなり大変です。
また、小学生は、あった出来事をうまく言語化できるとは限りません。そのため、上記のような出来事に対し、「あいつら、いつもけんかばっかりで、最低だ!」「〇〇君と同じクラスは嫌だ!」など、少し違う言い回しで表現することもあります。その結果、先生や親にさとされてしまい、「理解を得られない」と感じることもあります。
理由3:特大のアンテナがついている
もうひとつ特徴としてあるのが、「特大アンテナを持っている」ということです。高IQの子どもたちは、ほかの子供たちより、たくさんのことに気づき、たくさん考えていることが多いです。
廊下に2メートルおきに「のこさず食べよう」ってポスターが貼ってある。先生は「のこしてもいいよ」って言うけど、それは僕をはげますためなんだ。となりのクラスの先生も「残したら給食の先生に失礼ですよ」って言ってる。今は許してもらっているけど、来年はきっと無理だと思う
クラスで飼ってた金魚が、水槽の中でうかんでた。みんなが水槽のまわりに集まってたら、先生が「早く給食の準備しなさい」って言うの。でも、そんなのひどいよね? 給食より金魚の命のほうが、大切じゃない?
廊下の張り紙や、となりのクラスの先生の発言、前に先生が言ったこと、全校朝会で校長先生が言ったことなどを、よく覚えています。
たくさんのことに気づきますから、おそらく学校生活は大変です。
こんな風に、小さい心に、たくさんの感情をかかえて、うまく処理できなくなっているかもしれません。
理由4:過興奮性
ギフテッドの特徴のひとつとして、OE(過興奮性・過度激動)があります。
刺激に対して、非常に強く感じたり、反応をしめしたりします。OEには5種類あります。
- 精神運動性OE
- 感覚性OE
- 知覚性OE
- 想像性OE
- 知性OE
OEがあると、以下のような困り感を抱えることがあります。
- 給食の匂いがイヤ
- 教室のがやがやした音が苦手
- 痛みに極端に弱い
- 集中したらやめることができない
- 感情の起伏が激しい
- 机に座っていられない
- 周囲と会話が合わない
これが、学校生活を送るうえでの困難になることがあります。
理由5:完璧主義などの認知のクセ
一般的にギフテッドの子供たちはWISC項目における「言語理解」が高いです。言語理解が高い子には、完璧主義の傾向を持つ子が多いようです。周りの期待をよく察知し、また自分の「足りない部分」に敏感です。
先生の発言などから「学校生活で求められる理想の生徒像」を作り出し、その「理想」に届かない自分に苦しみ、自己肯定感を失っていくことがあります。
認知のクセ
ちなみに、受け取り方が他の子どもと少しずれていることもあります。そのため、先生の意図と違うことが伝わっていることもあります。こんな感じです。
字はできるだけ丁寧に書こうね
字はきれいに書かなければ失格
- 字は丁寧に書こうね→汚い字は許されない
- 給食はできるだけがんばって食べよう→給食を残すのはダメな子
- ここを直したらもっとよくなるよ!→ここが悪いから不合格
「何かができないからと言って、あなたの価値が下がるわけではない」「そのままでいいんだよ」「だれでもできないことがある」「欠点は人の魅力にもなりうる」「できなくっても、まあいいか!」ということを、言葉と態度で、根気よく伝え続けてあげることが大切です。
理由6:やっぱり浮きこぼれ
なんだかんだ言って、やっぱり「浮きこぼれ」ということはあります。
ギフテッドは、授業の半分~四分の三を、ただただ座って過ごしていると言われています。ギフテッドかどうかに関わらず、同じ状態の子供もたくさんいるでしょう。けれど、それを「耐えられる」子もいます。
「耐えられる」理由はさまざまです。
- 学校ってそんなもんだよね、と思える
- 休み時間に友達と遊ぶためならガマンするよ
- ぼーっと考え事して過ごしています
まあ、理想の状態とは言えませんが、一応学校生活はまわっていきます。
けれど、中には、それに耐えられない子がいる。
しかも情動性の過興奮性があったりしたら、その子の感じている「嫌だ!」の気持ちは、ほかの子の10倍くらい。
ただただ座っているなんて意味のないことに耐えられない!
暇すぎる!!横暴だ!!僕の時間を返せ!!うわあああ!!
周りから見ると大げさに思えることが多いですが、本人にとっては切実です。
非同期発達にも注意
高IQのお子さんは、すべてにおいて能力が高い、ということは稀です。一部の能力が突出していて、あとは平均的ということもよくあります。
そのため、「算数は簡単すぎるけど、漢字をきれいに書くのは難しい」「歴史の知識は高校生顔負けだけど、作文は一文も書けない」など、学校で与えられる教育にうまくフィットしていないことがあります。
まとめ:不登校の原因は、複合的
ギフテッドや「特異な才能を有する児童」が不登校になってしまう理由として、考えられるものを5つご紹介しました。
実際には、「これが原因だ!」とひとつに特定されることは少ないように思います。小さな要因が多く集まり、結果として「学校が安心できる場所ではなくなっている」「学校で充実感を得られない」ということも多いのではないでしょうか。
ギフテッドはIQ130以上と言われることもありますが、これは全体の約2%に当たります。50人に1人なので、思ったより身近な存在です。ギフテッドにもレベルがあり、みんながみんな、「小学生で大学レベルの数学が理解できる」ような天才ではありません。また、何の問題もなく過ごしているギフテッドもいます。
先生をしている方の場合は、クラスに1人くらい、こんな子がいるかもしれませんね。
多くの先生が「見たことない」とおっしゃいますが、いるんですよ
もしお子さんが、賢そうなのに登校が難しい場合は、ギフテッドあるいはその傾向があるかもしれません。
ギフテッドと賢い子の違いについてはこちらで記事にしています。
できないわけではないのに、登校が難しい子は、ホームスクーリングを検討してみてもいいかもしれません。我が家は、通信教育、オンライン英会話、スポーツ系の習い事の3本柱で取り組んでいます。
ポスト内容は、「ギフテッド関連」「子育ての困難」「中学受験」「不登校」「おうち英語」「知的好奇心を刺激するイベントの紹介」など。情報収集・交流の場としてご活用ください。