ギフテッド傾向のあるお子さんを育てていると、と思うこともあるかもしれません。
「小学校から不登校で、勉強は大丈夫だろうか?」
「こんなに激しくて、社会でやっていけるだろうか?」
「どうやらギフテッドらしいんだけど、どう育てればいいの?」
「好きなことしかやらなくて、大丈夫?」
ギフテッドの子供たちが将来、それぞれの個性を活かして輝くにはどうすれば良いでしょうか?
そんな不安や疑問を持つ保護者の方に参考になるように書いていますので、ぜひ最後までお読みください。
ギフテッドの育て方 7つのポイント
まず最初に、プロの見解を見てみましょう。ギフテッドの見識がある専門医として有名などんぐり発達クリニックの宮尾先生のコラムを少し引用させていただきます。
幼児期より受診し、継続的なリハビリ、心理カウンセリング、診療が行われている場合には予後が良かった。
学校環境では、比較的早期から通級の利用、あるいは、支援級にうつり、社会性の訓練や完璧でなければいけないあるいは重み付けができないなどの考え方を変えていく「まあいいか」の考え方を行っている場合、教師がその子供自身を大事にしてアドバイスをしながら見守って育てていく姿勢がある場合などは予後が良好であった。
保護者が通常級にこだわる場合、教師がその子供の欠点ばかりに注目し、子供の良い点をみようとしない場合、周囲の子供たちからのいじめが顕著な場合、友達はいなければならないという考え方がある場合などは予後が良好でなかった。
学習に関しては、塾で補えている子供が多く、うまくいっている場合には、四年生頃から通常級にうつり、有名私立中学に転校し、高校、大学ともに理数系の自分の好きな分野に進んでいた。
TOSS特別支援教室オンライン
以上のことをまとめると、ギフテッドの子育てで推奨されるのは、以下のような点です。
- ギフテッドに見識がある専門医の受診
- リハビリ(言語療法や運動療法)
- 継続的な心理カウンセリング
- 完璧主義の緩和
- 先生と保護者が子供のいいところを見る
- 学習は塾を利用
- 本人に合った環境を整える(通級、支援級、中学受験など)
もちろん、この通りにしなければいけないわけではありませんが、子育てするうえで指針になると思います。
それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
ギフテッドに見識がある専門医の受診
専門医に診てもらう場合は、やはりギフテッドについて見識のあるお医者さんに診てもらうほうがよいでしょう。
ギフテッドは病気ではないため、医学部では学びません。したがって、お医者さんによって知識には偏りがあります。
またギフテッドと発達障害を併せ持つ2Eの場合、特性同士が打ち消しあってしまうことがあります。つまり、以下のようなことが起こります。
- ギフテッドの特性が発達障害の特性を隠してしまう
- 発達障害の特性がギフテッドの特性を隠してしまう
- ギフテッドの特性と発達障害の特性が打ち消しあい、普通の子と思われてしまう
上記のような可能性を視野に入れて診察してくださる先生が望ましいです。
なかなか見つからないんですよね……
リハビリ
リハビリというと、子育てをしている人には少しなじみのない言葉ですが、言語療法や運動療法、作業療法、ソーシャルスキルトレーニングのことを指すようです。
苦手の支援、といったところでしょうか。
療育とも通じるものがありますね
このようなリハビリを提供している病院もあるうようですが、必ずしもすべての病院で行われているわけではありません。そのような場合には、民間の支援を活用する方法もあります。
X(Twitter)において、高IQでリタリコに申し込んでいた方を複数見かけましたので、共有しておきます。
リタリコは民間サービスの中では大手です。また、ギフテッド向けのセミナーも開催しているので、「ギフテッドに関する知識がある」という点でも安心できると思います。詳細は以下のコラムでお読みいただけます。
継続的な心理カウンセリング
心理カウンセリングは、以下のような場所で受けられる可能性があります。
- 病院
- 学校のカウンセラー
- 自治体の教育センター・支援センター
- 地域の大学の心理学科など
幼少期には、「プレイセラピー」と言って、遊びの中でお子さんの思いを引き出してくれます。
お茶の水女子大学などでも、プレイセラピーを提供しています(有料)。
>>お茶の水女子大学 心理臨床相談センター
完璧主義の緩和
「まあ、いいか」思考を身に着けるとは、「完璧主義を緩和する」ということでもあります。
ギフテッドの子は、自分の欠点に目が行きやすいことが多いです。
完璧主義を緩和するのは難しいですが、親自身がミスをする姿を積極的に見せることは有効かもしれません。「まあ、そんなこともあるよね」と受け流し方の見本を示すのもありかもしれません。
逆説的ですが、「完璧主義でも、まあいいか」というとらえ方も有効かもしれません。学校の先生から「生徒には高みを目指してもらいたいと思っている。完璧を目指して頑張ろうとしてくれる子がいてうれしい」と言われて救われたという声もあります。
通級や支援級を利用
学校と相談して、利用できそうであれば検討してみましょう。
ただ、お住いの地域や学校によっては、断られてしまうこともあるようです。多くの通級や支援級はギフテッドを想定したものではないため、学校側のサポートとギフテッドのニーズがずれていることもあるかもしれません。
定員がいっぱいであったり、在籍できる年数が限られていることもあります
そういった場合には、公立小学校にこだわらず、柔軟に環境を用意できるといいですね。通級や支援級のほかには、以下のような選択肢があります。
- 私立小学校
- フリースクール
- ホームスクーリング
- オルタナティブスクール
- インターナショナルスクール
- オンラインスクール
- 適応指導教室
ちなみに、インターナショナルスクールに転校して、困りごとがなくなったという方も一定数いらっしゃるようです。これは学力が合っているというよりも、同調圧力が少なく、個性が尊重される環境だからではないかと個人的には考えています。
先生と保護者が子供のいいところを見る
これはギフテッドに限ったことではありません。
けれども、なかなか難しいときもあります。難しい子たちですから!
学校の先生とどうしても理解しあえないというときは、塾の先生や、習い事の先生など、子供のいいところを見てくれて、かつそれを親にも子供にもしっかりと伝えてくれる大人と出会えるといいですね。
ちなみに、わたしのおすすめは、「探求塾」と呼ばれる塾の先生たちです。探求塾は、学習塾とは異なる新しいジャンルの塾です。お近くにあれば、一度体験に行ってみてもよいかもしれません。
「探求学舎」や「aスクール」などが有名です
学習は塾を利用
学習塾のメリットは下記のとおりです。
- 学校ほどルールが厳しくない
- 学習内容が難しく、優秀なことが価値になり、自己肯定感が上がる
- 似たような特性を持つ友人に出会える可能性がある
- 不登校の場合、同世代の子供と交流する場になる
また、どうやら進学塾は昔からこういった特性を持つ子の「受け皿」になっていたと思われる節があり、扱いに慣れている先生もいるようです。
先生やクラスメートが頻繁に変わると疲れてしまう子もいると思います。塾は体験をして、本人の好みに合わせると失敗が少ないです。
- 大人数は合わない可能性もあるので注意
- 往復のルートで疲れないか
- クラス分けとの相性
本人に合った環境を整える(中学受験など)
通級や支援級もしかりですが、本人に合った環境を整えることはとても大切です。
「本人にあった環境を整える」という点で、中学受験はひとつの選択肢です。本人に合った学校を選べますし、理解しあえる友人と出会える確率が高まります。
成人ギフテッドの体験を聞いていても、受験後に居心地がよくなった、と感じる人は一定数います
ほかにも、海外留学やインターナショナルスクールという手もあります。
明らかにずば抜けている子だったり、勉強以外の才能がある場合は、海外のギフテッドプログラムに入ったほうが幸せかもしれませんね。
大人になるとどうなるの?
お子さんに、学校への不適応や、問題行動などがあると、先が見えずに暗い気持ちになってしまうこともあると思います。
ギフテッドと言っても、特に天才という感じはしないし……この子は、将来どうなるの?
このような不安を感じている方のために、「専門家の見解」と「ギフテッドの大人の例」をご紹介します。
専門医の見解
先ほども引用した「どんぐりクリニック」の宮尾先生のコラムをご紹介します。
子どもがギフテッドかもと言われて「うちの子、天才!?」と勘違いされる親御さんもいらっしゃいます。でも、アインシュタインは100年に1人、ダ・ヴィンチは500年に1人なので、お子さんはもっと普通の人です。かつての我が国を繁栄に導いたHONDAやSONY、CASIOなどの優秀な技術者は、今で言うギフテッド(2E)だったと言われていますが、最近では社会性の低いギフテッドはほとんど雇われなくなっています。
今、我々のクリニックでみている子どもたちは、社会性を身につけ、物事を最後までやり遂げるようになり、それなりの有名大学を卒業して、大学や研究所の研究者、IT産業などの技術者として成功できるのではと思っています。そのような未来を描きましょう。優秀な当たり前の大人になることができる、彼らをつぶしてはいけないのです
SHINGA FARM
どうでしょうか。専門医の言葉を聞いて、少し安心したのではないでしょうか。
どんぐり発達クリニックは病院ですから、ここを訪れるギフテッドたちは「不登校」や「発達障害」「適応の問題」など、何らかの生きづらさを抱えている可能性が高いです。
中には、ギフテッドネスと発達障害を併せ持つ「2E」に相当するお子さんもいることでしょう。
そういった子たちに、このような明るい未来が描けると思うと、「今、学校に適応できなくても大丈夫」と励まされますね。
大人になったら、どんな感じ?
実は、私の周りにも何人か、「ギフテッドでは?」と思われる方がいます。
皆成人していますので、そのうちの4名について、差しさわりのない範囲で紹介します
公立小学校(不登校なし)→公立中学・公立高校→国立大学医学部→医者
Aさんは、幼稚園時代から、「あれは何て読むの?」とお母さんを質問攻めにして、どんどん漢字を覚えていきました。不登校などはありませんでしたが、食べ物の好き嫌いが多く、給食が苦手でした。
公立小学校(一時期不登校)→最難関私立一貫校→難関国立大学(理系)→研究者
Bさんは、おそらく、私が知る中でもっともIQが高い人物でしょう。小学校では不登校も経験。難関大学の院にまで進学しましたが、それでもなお、教授を含め自分と分かり合える人はいないと孤独感を覚えていました。民間の企業で研究職につきました。
公立小学校→公立中学校→公立高校→難関国立大学(文系)→弁護士
Cさんは、小・中と「賢いけど生活態度が悪い子」として扱われてきました。高校で受験をして、初めて「周りの環境」と「自分」が嚙み合ったと感じています。
私立小学校→私立中高一貫校→難関国立大学(文系)→一般企業に就職
Dさんは、校外にまで噂が届くほどの本の虫でした。高校では保健室登校を経験。その後、順調に進学し、一般企業で働いています。
ギフテッドと言ってももちろん、性格も違うし、個性も違います。
未来もひとつではありません。
まとめ:ギフテッドの育て方
ギフテッドの育て方について、専門家の見解をもとにまとめました。
- ギフテッドに見識がある専門医の受診
- リハビリ(言語療法や運動療法)
- 継続的な心理カウンセリング
- 「まあ、いっか」思考を身に着ける
- 先生と保護者が子供のいいところを見る
- 学習は塾を利用
- 本人に合った環境を整える(通級、支援級、中学受験など)
子どもはひとりひとり違いますので、もちろん、この通りにしなければいけないわけではありません。
子育てするうえで少しでも参考になる部分があったなら、記事を執筆した身としてはうれしい限りです。
もし、まだ専門医にかかっていないのであれば、まずは専門医に行ってみましょう。仮にギフテッドでなかったとしても、必要な支援の足掛かりになりますよ。
こちらの記事では、私がこれまでに実際に取り組んで効果を感じたトレーニングや、検査、ペアトレなどをご紹介しています。有料記事ですが、前半は無料で公開しています。